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インプラント治療のいろいろ

インプラントシステムについて

国内には約30社のインプラントメーカーが存在し、様々なタイプのものがあります。

インプラントシステム

ストローマン.インプラントシステム
ストローマン.インプラントシステム
1972年にスイスのベルン大学とストローマン研究所との協力のもと開発された、歴史ある1回法(※)インプラントです。
2回法が主流であった当時、特異的な存在でしたが、現在ではどこのインプラントメーカーも採用しているシステムです。
アンキロスインプラント
アンキロスインプラント
ドイツ生まれのインプラントで15年の経過予後上顎98.2%下顎97.6%と大変良好な成功率をほこる。
治癒期間もストローマンインプラントと同じように6~8週で使用できる。 他社のインプラントでの標準のインプラントサイズが太さ4mm×10mmであるのに対してアンキロスインプラントは直径3.5mmであり日本人の薄い骨に最も適している。上部構造のバリエーションも非常に豊富である。
また、現在のトピックスであるプラットホームスイッチングがあり機能時の骨の吸収が少なく、審美的にも優れています。
二回法で感染のリスクが極めて少ない のも特徴のひとつで、テーパー接合のため接合部の空隙が無くなり、マイクロギャップが低減され、最近の侵入を防止することができます。
ブローネマルクインプラント
ブローネマルクインプラント
ノーベルバイオケア社(スウェーデン)製の2回法(※)で代表的なインプラントです。
1952年、スウェーデンのブローネマルク博士が発見したオッセオインテグレーションに基づきます。
博士の研究チームが微少循環(血液の流れ)に関する研究を行っていたとき、治療の経過を観察するために動物の体内に埋めたチタン片が研究終了時に取り外せませんでした。
この現象に博士は興味を持ち、さっそく大規模な研究を開始し、歯科治療への応用法を探りました。
そして研究が終了してチタンを取り外そうとしたとき、チタンが骨組織と特殊な方法で結合する過程が明らかにされ、ブローネマルク博士はこれを「オッセオインテグレーション(骨結合)」と命名したのです。
これが現在のインプラントの基盤となっています。
※「1回法」「2回法」の数字は、人工歯を取り付けるまでの手術の回数を表します。
アストラテックインプラントシステム
アストラテックインプラントシステム
スウェーデン歯科医師によって開発された2回法インプラントです。
この歯科医師は元々ブローネマルクインプラントを臨床で応用していましたが、患者様からいろいろと訴えを聞いた後、新しいインプラントの開発を開始しました。
現在スウェーデンでは、インプラントシェアをブローネマルクインプラントと二分するぐらいまでに成長しています。
リプレイスセレクトインプラント
リプレイスセレクトインプラント
ノーベルバイオケア社が開発した、主に2回法(1回法もある)のインプラントです。同社のブローネマルクインプラントに比べ値段が安く、短めのため骨の厚みや高さが足りないことが多い日本人には適しています。
そのため、日本でもブローネマルクからリプレイスセレクトに切り換える歯科医院が多くなっています。
スイスプラスインプラント
スイスプラスインプラント
アメリカにおいて、スイスのI.T.I.インプラントを模して開発されたインプラントです。
表面はSBMブラスト処理によりザラザラした形状になっており、この形状がインプラントと顎の骨との結合(オッセオインテグレーション)を促進します。
治療期間が比較的短く、ケースによっては即時加重も可能なインプラントです。

当院のインプラント治療例については、こちら

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5つのインプラントシステムを比較

  I.T.I.(ストローマン) ブローネマルク アストラテック リプレイスセレクト スイスプラス
大きな特長 患者の負担が少ない どんなケースにでも対応が可能で歴史が一番古い ブローネマルクの欠点を補ってつくられた ブローネマルクに代わり、シェアを伸ばしている 形状はI.T.Iとほぼ同じ
原産 スイス スウェーデン スウェーデン スウェーデン アメリカ
手術回数 1回法、または2回法(基本的には1回法) 1回法、または2回法(基本的には2回法) 1回法、または2回法(基本的には2回法) 1回法、または2回法(基本的には2回法) 1回法、または2回法(基本的には1回法)
手術の危険度 短いインプラント植立のため、神経や血管を傷付ける可能性が少ない 長いインプラント植立のため、神経や血管を傷付けるおそれがある 長いインプラント植立のため、神経や血管を傷付けるおそれがある 短いインプラント植立のため、神経や血管を傷付ける可能性が少ない 短いインプラント植立のため、神経や血管を傷付ける可能性が少ない
どの部位に適しているか
  • 日本人の小さな顎の骨に適している
  • 前歯部にやや難あり
  • どちらかといえば日本人向きではない
  • 骨の厚みや高さがあればどんな難症例でもこなせる
  • 前歯部によく使われるが、臼歯部でも問題ない
  • 日本人の小さな頬骨に適している
  • 上顎や前歯部向き
  • 日本人の小さな顎の骨に適している
  • 前歯部にやや難あり
インプラントシェアの位置付け 世界で2番目の
シェア
世界で1番信頼されていた 現在世界の4大オリジナルインプラントのうちの1つ ブローネマルクインプラントの代わりになりつつある  
器材のバリエーション 現在のシステムがブローネマルクにかなり近くなっている 器材が大変豊富 他に比べると少ない ブローネマルクのものがすべて使用できる I.T.Iと100%互換性あり
治癒期間
  • 骨質1~3度:2ヶ月
  • 骨質4度:3~4ヶ月(上下顎にかかわらず)
  • 下顎は3ヶ月
  • 上顎は6ヶ月(従来型)
  • 最新のものは3ヶ月以内
  • 下顎は3ヶ月
  • 上顎は6ヶ月
  • 2~4ヶ月
  • 下顎は3ヶ月
  • 上顎は3~6ヶ月
骨との結合強度 ブローネマルクと比べ、優れている 従来のものでは弱いが、現在は同等になった I.T.I.と類似している 最新のブローネマルクと同じ TiOブラストに似る
インプラント S.L.A.(サンドブラスト+酸処理) 機械研磨 TiOブラスト表面
(S.L.A.に類似)
Ti Unite
(タイユナイト)
 
表面性状 もっとも信頼できる表面性状 Ti Unite
(タイユナイト)
     
その他の特徴
  • 25年の歴史がある
  • 治癒期間が短い
  • 治療費がブローネマルクより安い
  • 骨との結合がもっとも良好である
  • システムが完成されている(歴史が30年と長い)
  • 治癒期間が長い
  • 治療費が高い
  • 骨の質・高さ・厚みによりインプラントが不可能な場合がある
  • I.T.I.では2本で済む場合でも、3本入れなければいけない場合がある
  • 歴史は浅いが、ブローネマルクシステムの複雑な面やインプラント表面性状が改善されている
  • 歯ぐきの回復が良好
  • 長期の成功率が高く、患者の負担が少ない
  • ブローネマルクと同じメーカーがつくっているので信頼性は高く、ブローネマルクからリプレイスに切り換える歯科医は多数
  • I.T.I.とほぼ同じ形状で互換性があるので、使用するドクターが増えた
  • 材料費が安い

骨が足りない・薄くて治療ができない」といわれてしまった方へ

顎の骨が足りない・薄い方には、インプラント治療を可能にするために以下の「サイナスリフト」もしくは「ソケットリフト」を行います。

  • サイナスリフト
  • サイナスリフト
  • サイナスリフト
  • サイナスリフト
  • サイナスリフト

サイナスリフト

上顎の骨のすぐ上には上顎洞(サイナス)という空洞があり、この上顎洞が下方に拡大すると上顎の骨に厚みがなくなります。インプラント植立のためには、上顎の骨の厚み(8mm以上)が必要になります。そこで行われるのが、骨の厚みを造骨によって増やす方法「サイナスリフト」です。

上顎の骨の厚みが5mm以下の場合に、上顎洞の粘膜(シュナイダー膜)を剥離し挙上した空隙に患者様ご自身の骨や骨補填剤を移植し、インプラントを植立できるだけの骨の厚みをつくります。骨ができるまで、約半年を要します。

  • ソケットリフト
  • ソケットリフト
  • ソケットリフト
  • ソケットリフト

ソケットリフト

5mm以上の骨の厚みがある場合は、上顎洞底部の骨を専用の器具(オステオトーム)で槌打しシュナイダー膜ごと挙上しながら、患者様ご自身の骨や骨補填剤を移植して骨の厚みをつくります。

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インプラント治療の裏話

インプラントが失敗してしまう理由

インプラント治療を行う際、すべてのケースで成功するとは限りません。失敗してしまう例もないわけではないのです。以下でその理由をご紹介します。

1.骨の質の問題
骨の質が柔らかすぎる場合、植立後の安定が悪く、少し力をかけただけで抜け落ちる場合があります。その逆に、非常に硬い場合は、植立後の安定性はありますが、インプラント周囲の血の巡りが悪くなることから抜け落ちることがあります。また、質だけでなく量にも影響されます。高さや幅が少ないとインプラントの寿命に影響します。
※骨の量に関しては、レントゲン撮影後、CTスキャンなどにより確認できますが、質に関しては実際に植立するまで正確に把握できないことがほとんどです。
2.適切なブラッシングが行われなかった
インプラント植立後に適切なブラッシングを怠ると、インプラント周囲炎(歯周病のような病気)になりせっかくのインプラントが抜け落ちる場合があります。歯を失った理由が歯周病の方は、特に注意が必要です。失うまでと同様のブラッシングでは、再び感染するおそれがあります。
※当院ではブラッシング指導を行っています。
3.咬み合わせが悪く、インプラントに常に余計な負荷がかかっている
植立したインプラントに人工歯を被せる際に調整しますが、咬み合わせは常に一定なものではないので、定期的なチェックと調整が必要になります。
4.患者様ご自身のよくない生活習慣
糖尿病の方、ヘビースモーカーやアルコール依存症の方は、失敗する確率が高くなります。
5.医療ミスによるもの
診断ミスによる神経損傷や、植立方向に問題があった場合、骨のない部位に植立した場合は、後々抜けたり、抜かなければならない状態になったりします。

このように失敗の可能性はありますが、それ以上に、インプラント治療にははるかに多くのメリットがあります。きちんとご説明しますので、何かわからないことがありましたら、お気軽にお尋ねください。

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インプラント治療失敗例

1.インプラントを植立2週間後に抜けてしまった!
原因として、細菌による感染が考えられます。大体の場合はヘビースモーカーや何らかの成人病がある方に起きやすく、また、インプラントを埋めた周囲の骨が異常に柔らかい場合や異常に硬すぎる場合にも起こります。インプラントに触れるとぐらついたり膿が出たりし、ある日ぽろっと何事もなかったように抜け落ちます。
対処法

インプラントが抜けてから最低でも1~2ヶ月後に再度植立しましょう。

2.被せものをした直後に抜けてしまった!
造骨した後にインプラントを植立した場合によく起こります。インプラントの結合が弱く、骨から剥離したことが原因です。
対処法

直後はできるだけインプラントに力をかけず、しばらく放置することで再結合を促しましょう。

3.インプラント植立後から長期にわたって痛い……
この場合は、ドリルで穴をあける際に骨の細胞に熱が伝わり、骨に炎症が起きているためです。
対処法

一時的に痛みますが、その後症状は引いていきます。鎮痛剤や抗生物質で痛みと炎症を和らげます。

4.下顎にインプラント植立後、唇がしびれる……
これは、インプラント植立の際に神経が傷付いてしまったか、あるいは傷口が腫れたため一時的にしびれているかのどちらかで、太い神経を完全に切断していない限りはほぼ回復します(回復は2週間~1ヶ月、長いときは2~3年にもわたります)。
対処法

2~4週間様子を見ましょう。回復傾向にあればそのままにし、回復が遅いときは一度担当医師に相談してください。

5.サイナスリフト、上顎の奥歯にインプラント植立の後に鼻血・鼻汁が出る……
これは、鼻に通じる上顎洞に炎症が見られるときに出る症状です。
対処法

処方された薬を2週間ほど飲めば治ります。

6.治療後3年ほど経って抜けた……
この場合は、インプラントに負荷がかかりすぎてインプラントと骨の境目に亀裂が生じ、剥離したことから抜けてしまったと考えられます。特に上顎の柔らかい骨に植立した場合、この可能性が強いでしょう。また、歯ぎしりがあり、毎日インプラントに異常な負荷がかかっているときにも起こります。
対処法

再度植立時に長くて太いインプラントに交換するか、隣に追加でインプラントを入れます。

7.歯周病になったのを放っておいたら抜けてしまった……
メインテナンスを一切受診せず、放置し続けたため汚れがたまり、歯周病が悪化し顎の骨が溶け抜けてしまったと考えられます。
対処法

この状態だと、顎の骨のほとんどが溶けているため、その部分に薬剤を注入して顎の骨を回復させ、またブラッシング指導を受けていただきます。

8.歯ぎしりで抜けてしまった!
歯ぎしりで歯が削れると、インプラントに常に異常なストレスがかかり、次第に動揺して抜け落ちてしまいます。
対処法

この場合には、再度植立時に長くて太いインプラントに交換するか、隣に追加でインプラントを入れるか、という選択肢があります。また、歯ぎしりによる抜け落ちの兆候が見られたら、マウスピース(スプリント)を夜間に装着して未然に防ぐこともできます。

9.セラミックの人工歯が欠けてしまった!
セラミックの人工歯は、強い衝撃に耐え切れず割れる場合があります。
対処法

小さく割れた場合は丸めるなどの修正を行い、大きく割れた場合は人工歯を外してセラミックを盛り直します。

10.被せものがよく取れる……
被せものはセメントやネジで固定されているため、緩んでいる場合にはズレます。
対処法

セメントを強力なものにするか、ネジの締め付けを強固にします。

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インプラントの成功率

インプラント成功の基準は、「10年以上機能したインプラント」ということになり、世界で約96%です(ほとんどは11年目以降でも機能し、実際40年近く機能している例も多くあります)。残りの4%はいろいろな原因により脱落しています。その大きな理由としては、患者様ご自身によるもの(不適切なブラッシング、乱れた生活習慣など)が多いとされています。

このように、わずか4%でも失敗するおそれがあるインプラント治療ですが、当院では、

「もしインプラントが抜けたとしても、またやり直すことができますよ。歯が抜けた部位の傷口は6ヶ月で完全に治癒するでしょう。インプラントは骨の中に入れているものだから、抜けても骨は再生しますから大丈夫!」

と考えています。

インプラントが抜けてしまった患者様に対して重要なのは、ただ再治療を行うのではなく、患者様の気持ちをくみ取り親身になってフォローアップしていくことだと当院は考えます。前向きに治療と向き合い、長く使えるように、年2~3回のメインテナンスに欠かさずご来院いただくことをおすすめしています。

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